心珠区記

畠田心珠ともうします。書家。書道教室のことなどはホームページ h-shinju.com をご覧くださいませ。

指導されることと指導すること

私のことを先生と呼んでくださる方がいます。私はそのみなさんのことが好きですし、みなさんがみなさんの願う上達に近づけるように協力したいと思っています。みなさんがご存知ない書についてのたくさんのこと、面白いものだと知っていただけるよう、私がこれまで学んだことを伝えていきたいと思っています。

それと同時に私が先生と呼ぶ方もいます。私が昨日の私より上達するように、よい作品が書けるように指導してくださるのが先生です。先生の前では私はとても小さな存在で、自分のことをうまいなんて思ってはいけません。

私の中に「先生である自分」と「弟子である自分」がいます。「先生モード」と「弟子モード」と呼ぶことにします。

一旦「弟子モード」に入ってしまうと、私の未熟さがひしひしと感じられて、もっとたくさん書いて上達しなくてはなあと思います。私に指導してくださる先生に近づくには、あと何百年必要なんだろう、私には到底辿り着けないや、とまで思ってしまいます。だから、そのモードから「先生モード」になるときは、大きなエネルギーを要します。「弟子モード」の自分は、自分のことをまだまだまだまだ未熟だと思っているのですが、「先生モード」の時にそんな自分を出してしまったら、そんな人に誰も教わりたいと思わないでしょう。

もちろん、私だってこれまで多くの時間を書に費やしてきました。そこには自信を持っているし、指導することも好きです。でも「弟子モード」の自分の方が少し楽だったりします。そこに責任が伴わないからかな。

世の中には私と同じように、指導されつつ指導する立場の方はたくさんいらっしゃいます。他の皆さんはどんなふうにバランスを取っていらっしゃるのかなあと思います。

「弟子モード」の自信のなさは私自身が書き続けることでしか解決しません。もっと書く時間を作りたいものよ、とひしひし感じた雨の夜。「先生モード」の時は、なるべくみなさんが自信を持ちつつ、さらに前へ進みたくなるような指導をしたいなあと思っています。